●下院敗北はトランプの狙い通りであり「贈り物」
アメリカ中間選挙の結果は日本や韓国では『国民の審判』だとか、トランプ政権の行く末を憂慮、というか、韓国では嬉しがるような報道が多く見らえましたが、ご存知のようにトランプ大統領自身は『勝利した』というツイッターをあげていましたよね。
▼ ツイッター内容とその記事.........................................................................................
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その言葉をトランプ大統領の「負け惜しみ」、「苦しい言い訳」という見方をしているものもありましたが、経済政策や2年後の大統領選を見るときには却ってこれはトランプ大統領には「贈り物」という記事もあります。もちろん、その経済政策面では、日本や韓国に住んでいる私たちには歓迎されるものばかりではありませんが。。
楽観的に安心ばかりはしていられませんが、2年後の再選に向けての戦略は着々と進められているようです。「試練をチャンスと見る」トランプの太っ腹、トランプマジックを2年後にぜひ見たいものです。
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ー以下、抜粋転載ー
トランプの信任が問われた中間選挙は、上院は共和党、下院は民主党が過半数を占める「ねじれ議会」へ。この結果は再選を目指すトランプへの贈り物になりそうだ。
(『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』近藤駿介)
トランプと民主党の双方に好都合?日本へのあたりも激しくなる…
経済政策はむしろ加速する
確かに民主党が下院で過半数を握ったことで、これまで議会ではあまり取り上げられて来なかったトランプ大統領に関するスキャンダルや移民政策などで大統領と下院が対立する場面が増えることは想像に難くない。
しかし、念頭においておかなければならないことは、大統領の資質や政治的姿勢の面でトランプ大統領と下院の対立が起きる可能性に比べれば、経済政策で対立する可能性は低く、むしろお互いが歩み寄る可能性があることだ。
与野党の主な対立は人権・社会保障分野。対中国政策では考えが一致する
経済政策ではトランプと野党が共闘する
トランプ大統領の経済政策が、1兆ドルのインフラ投資や10年間で1.5兆ドルの減税というという財政主導であったことで「共和党=大きな政府」という印象が強まっているが、共和党はもともと「小さな政府」を標榜した政党である。財政負担を伴うトランプ減税も、「小さな政府」を目指す共和党にとっては自然な政策でもあるのだ。
「小さな政府」を標榜する共和党に対して、民主党は「大きな政府」を容認する立場に立っている。2016年の大統領選挙で「民主社会主義」を掲げるサンダース上院議員が台頭したのも、今回の中間選挙で国民皆保険や高等教育の無償化を訴える史上最年少下院議員が誕生したのも、「大きな政府」を容認する民主党ならではの現象だといえる。
人気歌手のテイラー・スウィフトがトランプ大統領や共和党候補の女性やLGBT(性的少数者)などに対する姿勢を批判して民主党支持を表明したことや、オバマケアに関して両党が対立し続けていることなどもあり、民主党とトランプ大統領の政策は相容れないものであるという印象が強まった。
しかし、それは人権や社会保障などの分野の問題であり、経済政策に関する主張は相容れないほど対立しているわけではない。
米中貿易戦争は選挙対策のパフォーマンスではない?
特に対中国政策においては、民主党はトランプ大統領と同様に強硬派である。民主党のこうした基本姿勢はオバマ前大統領が中国に対して弱腰であり過ぎたことが中国の台頭を許す要因になったという反省も加わり、一段と増していると考えられる。
事実、2016年の大統領選挙で民主党の大統領候補だったヒラリー・クリントン氏は「私が大統領になれば、(中国の指導者は)規則に従わなければならないだろう」と述べ、貿易問題ではオバマ氏よりも厳しい路線をとっており、不公正な貿易慣行をめぐって中国政府に挑むと誓っていた。
日本ではトランプ大統領が中国に仕掛けている貿易戦争は中間選挙に向けた政治パフォーマンスであり、中間選挙が終われば落としどころを探ることになるという見方が根強い。11月1日に米国側から持ち掛けた米中首脳による電話会議が開催されただけで「貿易戦争打開」への期待が高まったのも、こうした見方が根強いことの証左である。
しかし、民主党の中国に対する姿勢がトランプ大統領と方向として同じであるとしたら、こうした見方は楽観過ぎると言わざるを得ない。
「ねじれ議会」はトランプと民主党の双方に好都合。日本にも矛先は行く…
「ねじれ議会」はトランプと民主党の双方に好都合
むしろ、対中国を中心とした貿易問題に関しては、中間選挙の結果、共和党が上院を抑え、民主党が下院を抑えるという「ねじれ議会」が生れたことは、トランプ大統領、民主党双方にとって好都合だと考えるべきかもしれない。
上院を抑えた共和党の利点は、政府の人事権を抑えたことと、下院を民主党に抑えられたことによってトランプ大統領がこれまで通り、あるいはこれまで以上に外交・通商交渉で強硬姿勢を強めても自然の流れだと見做されやすいことである。
一方、下院を抑えた民主党は全ての委員会の人事を握ることで内政を中心に主導権を握り、スキャンダルなどでトランプ大統領を追い込むことが可能になった。それと同時に、それによってトランプ大統領を議会の権限が及びにくい外交や通商問題でより強硬姿勢を取って行くように仕向ければ、国際社会からの保護主義的という非難をトランプ大統領に担わせながら民主党の目指す方向に事態を近づけることが出来ることになる。
米経済の拡大を維持するのはさすがに難しい
2020年の大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領は、今回の中間選挙の結果「ねじれ議会」が生じたことを歓迎すべき事態として受け止めているかもしれない。
それは、減税の効果は剥げ落ちて行くことや当面FRB(連邦準備制度理事会)が漸進的利上げ政策を継続する可能性が高いことなどから、この先米国経済の成長が鈍化するのは避けられない状況にあるからである。
米国の戦後の平均的な『景気拡大』局面が5年であるのに対し、2009年7月から始まった現在の米国の景気拡大局面は10年目に突入し、1991年4月から2001年3月までに次ぐ戦後2番目の長さになっている。
失業率が48年ぶりに3.7%まで低下し完全雇用状態にある状況で、さらにあと2年間経済を成長させ続けて2020年の大統領選挙を迎えることは「トランプマジック」を使ったとしても容易いものではない。
トランプは「ねじれ議会」を歓迎? 経済鈍化の責任を一人で負わずに済む…
トランプは「ねじれ議会」を歓迎している
9月時点でのFOMC(連邦公開市場委員会)のメンバーの景気見通しの平均値は、トランプ政権が3%成長を維持するという目標を掲げているなかで2021年までには1.8%に減速する格好になっており、それに伴い政策金利も2020年にはピークアウトする見通しになっている。
金融政策が緩和的でなくなったことや景気拡大期間からすればいつ景気拡大が止まってもおかしくない中で「ねじれ議会」が生じ、政策的自由度が失われていくことは、トランプ大統領にとって「政策的自由度が失われたことで景気が悪化した」と主張できる好都合なことでもある。
次の大統領選が始まる2020年1月に「トランプ待望論」が起きている?
景気がいつピークアウトするかは定かではないが、大統領選挙がスタートする2020年1月ころに景気がピークアウト傾向を示していたら、それは景気回復に向けての「トランプ待望論」を煽る絶好のタイミングだといえる。
戦後2番目の長さの経済成長を達成した実績を持ち、2020年の大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領は、「ねじれ議会」の出現は天から再選にむけてのプレゼントだと感じているかもしれない。その位の図太さを持たなければ「トランプ大統領」を演じ切ることは不可能だ。
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<参考>
《本記事のポイント》
• マスコミは民主党の下院奪還に注目するも、トランプ氏は織り込み済み
•トランプ氏が勝ちたかった上院と州知事選では、共和党が優勢となった
• 民主党は下院しか奪還できず、トランプ政権のあら探しを始めるのが関の山